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癒やしの「笑い」広がる輪
医療・福祉現場も活用
ストレス社会の今、「笑い」の効能が注目を集めている。心身を癒やす不思議な力があるといい、スポーツやセラピー、さらには医療・福祉の現場で積極的に「笑い」を取り入れる試みが広がっている。人は「楽しいから笑う」だけではなく、「笑うから楽しくなる」らしい。
http://osaka.yomiuri.co.jp/kokorop/kp71009a.htm
「笑いヨガ」教室で、体を揺らして大笑いする田所さん(中央)。参加者もいつの間にか、とびきりの笑顔に(9月24日、三重県松阪市の松阪農業公園ベルファームで)
「さあ、深呼吸して。吐きながら笑ってみましょう。1、2の3!」「アーッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハー」
三重県松阪市の松阪農業公園ベルファーム。田所メアリーさん(53)の合図で、男女約20人が一斉に笑い声を上げた。
「子供に戻った気持ちで、楽しみながら。はい、次は梅干しを食べるしぐさで」。恥ずかしそうだった参加者も、様々な身ぶりで笑いを繰り返すうち、リラックスしてくる。会場には何度も爆笑が広がった。
ヨガの呼吸法や瞑想(めいそう)を組み合わせた「笑いヨガ」。インドの開業医が12年前に考案した。55か国で20万人以上がすでに体験し、世界中に5000以上の「ラフター(笑い)クラブ」がある。
米国出身で東京都在住の田所さんが、日本初のクラブを設立したのは昨年6月。受講生らが相次いで“独立”し、国内のクラブも六つに増えた。
力いっぱい笑うことで、心肺機能が強化され、腹筋強化や血行促進などの効果が得られるという。
この日、初体験した同県伊勢市の女性(44)は、1時間半の受講で「首や肩の凝りが楽になった」と晴れやかな表情。今年9月、関西を拠点とする新クラブを発足させた大阪市の健康食品販売業、岩井誠さん(54)は「認知症の母親と2人暮らしだが、介護のストレスにも強くなった。高齢者施設でも広めたい」と話す。
「そんな顔で物が売れるか。笑わんかい」
東京と大阪で「笑顔セラピー」の講座を開く心理カウンセラー、野坂礼子さん(60)が、笑顔の力に気づいたのは、以前勤めていた会社の上司からの一言がきっかけだった。
23年前に離婚し、子供2人を養うため飛び込んだ学習教材の販売業。門前払いばかりで落ち込んでいたが、笑顔を心がけたところ、「前向きになり、3か月後には営業所でトップの成績に。その後もみるみる運が開けた」と振り返る。
講座には、人間関係や生き方に悩む人々が全国から詰めかける。提唱しているのは、表情筋を上げる「笑顔体操」と感謝の言葉を心の中で繰り返すこと。
「つくり笑顔でも脳が刺激され気分が良くなるんです。言葉との相乗効果で、プラスのエネルギーが満ちてきて、数か月で皆、驚くほど生き生きしてくる。職場や家庭での人間関係もスムーズになりますよ」
笑いは、本当に心身を元気にする効能を持つのだろうか。
「ストレス解消」の科学的効果を強調するのは、大阪府立健康科学センター(大阪市)参事兼医長の木山昌彦さん。同センターは定期的に「健康落語道場」を開き、客の唾液(だえき)を分析。ストレスで増え、解消されると減る副腎皮質ホルモン「コルチゾール」の変化を調べたところ、22~86歳の417人のうち、半数以上の227人が落語を聞いた後に減少するという研究結果を得た。
このほかにも、笑いには、▽免疫力を高める▽血糖値の上昇を抑える――などの医学効果が実際に報告されているという。
こうした効能に着目した新たな取り組みが、各地で始まっている。
患者の立場にたった医療環境を考える「癒(いや)しの環境研究会」(代表世話人=高柳和江・日本医科大准教授)は、患者の自己治癒力を高めようと、病気で弱った心に寄り添い、笑顔を引き出す「笑い療法士」の養成を始めた。患者心理学や脳の解剖学など2日間の講習などによって、2005年以降、医師や看護師ら217人を認定。がん患者が「笑いで痛みを忘れられた。同じ病気で苦しむ仲間を元気にしたい」と応募し、認定を受けたケースもある。
大阪府は昨年度、地元の「お笑い文化」を健康に役立てようと、府立上方演芸資料館(大阪市)に委託し、笑いの健康への効果をテーマにした講演を組み合わせた漫才や落語などの高座を、6回、医療機関などで派遣開催した。
青森県は今年度から、児童虐待防止策として、子育て中の親たちに笑顔を広める事業をスタート。研修を受けた児童相談所職員や民生委員らを「笑いプロデューサー」などに任命し、親たちが育児で精神的に追い詰められないよう、地域ぐるみで笑いによるケアを続けている。担当者は「いじめや自殺防止にも役立つはず」と期待する。
笑う門には福来たる――。昔の人はよく言ったものです。あなたも、もっと笑って、笑いのパワーを実感してみませんか。
文・橋本佳与 写真・吉野拓也
考案者のメッセージ紹介/笑顔セラピーも
田所さん=写真=主宰の「ラフターヨガ・ジャパン」のホームページ(http://www.laughteryoga.jp)では、「笑いヨガ」考案者のマダン・カタリア医師のメッセージや健康への効果などを紹介。国内各地のクラブの開催予定も掲載している。
関西地域で活動する「関西ラフタークラブ」の日程は、11月23日と12月14日の午後6時半~8時、大阪市東淀川区の「クレオ大阪北」多目的ホールで。いずれも定員20人、参加費2000円。動きやすい服装で、水やタオルなどを持参のこと。申し込みは、同クラブの岩井さん(ファクス 06・7504・5226、メール kansailaughterclub@gmail.com)。松阪農業公園ベルファームでも定期的に開催中。問い合わせは同事務局(0598・63・0050)へ。
野坂さんが開く「笑顔セラピー」の問い合わせは、「ありがとうございます笑顔セラピーねっと」(06・6351・7892)へ。
(2007年10月10日 読売新聞)
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